世界自然遺産「知床」
〜流氷の海から〜

今年の冬、流氷はこれだけ?

夜明け前、まだ真っ暗な空の下、北海道の東に位置する港は漁船のエンジン音が響き、スケトウタラ漁の準備が行われていた。2月下旬の羅臼港、午前5時。暖冬と言われながらもさすがは北海道、空気は冷え込み、キンキンに冷えている。港の隅の方で、3隻の小さなクルーザーも乗船を開始している。
世界的にも珍しい、ある鳥を見る為の観光船。大きなレンズや三脚を抱えて次々と乗り込んでいる。5時過ぎ、漁船よりも先に港を出る。速度を上げるとまさに身を切るような風が突き刺さる港を出てすぐに速度を落とした。船の横には流氷が見える。

今年の流氷はオホーツク海を埋め尽くす程の量がなく、氷の厚さも薄く、蓮氷のような流氷が知床半島の北側、オホーツク海に面する側に着岸しただけなのだ。その流氷原から奇跡的に知床岬をかわした帯のような小さな固まりが根室海峡に入って来ていたのだった。2月の羅臼、例年であれば流氷原の向こうに国後島、鋼鉄製の漁船がエンジンを全開に、黒い煙を出しながら流氷原の氷をかき分け進む姿が冬の羅臼の風物詩なのだが。温暖化の影響。それとも単に流氷が少ない周期の年なだけ??

流氷の海に昇る太陽

クルーザの船長は、盛んに電話や無線で、港を出港している漁船と連絡を取っている。まだ薄暗い流氷が浮かぶ海を進むのは危険と判断し、港近くの流氷原で大きな氷を探し始めた。そうこうしているうちに、漁船が次々と出向し、一列に光の列となって知床岬方面に進んでいる

空が白み始め、羅臼岳を始めとした知床連山がうっすらと姿を現し始めた。日の出方向、国後島の島影も見えて来た。


姿を現した流氷は、小さな砕けた氷が固まって流れてきた、そんな感じだった。2004年3月にアザラシの子供を撮影した時の氷はこんな感じ

オオワシとオジロワシ

割と大きな氷の上に、スケトウタラ漁の雑魚を蒔き始めると、まずカモメが集まってきた。やがて白み始めた空に大きな鳥影が飛び込んできた、次々と氷の上に降り立つ。
黒い体に羽に白が入る、主はオオワシ

全体的に茶色で尾っぽが白いのがオジロワシ

どちらもスケトウダラなどの魚を食べる海鷲。翼を広げる2m50センチほどになり、トンビとは大きさが桁違いで近くでみると圧倒される大きさ。

オオワシの分布が限られた鳥で、全繁殖のつがい数、2,200ほど、全個体数は5000〜6000で、1500〜2000羽が北海道など北日本で越冬するために飛んでくる。一方、オジロワシは分布は広いがそれでも世界の繁殖つがい数は、5000〜7000と言われており、そのうち、700羽ほどが日本で越冬すると言われている。いずれにしても数は少なく、日本版レッドリストで絶滅危惧種、世界的にも希少種とされている。そんな鳥が集まってる姿は圧巻。最近はヨーロッパ、バードウォッチが盛んなイギリスなどからこの鳥を見るためにツアーを組んでくるほど。
船から時々投げられる魚を急降下し

大きな鷲爪でがっしりと掴んで行く
それからお気に入りに氷の上で朝食に預かる


流氷上で鳥が群れ始めると、次々と集まってくる。おそらく羅臼周辺の断崖にいた鷲たちが、遠くまで見渡せる鷲目でこの様子を見つけた飛んでくるのだろう

翼を広げるとゆうに2mにもなる鳥が次々と餌を撮りに船の周りに降下してくる光景は、時間を忘れてしまう。



気がつくと、鷲、カモメ、カラスで、辺りは鳥だらけだった。振り返ると、羅臼の港の向こうに、知床連山、羅臼岳がくっきりと姿を現していた

夢中で望遠レンズを手持ちで振り回していた。電池交換のため、カメラを置くと、指が動かない程、寒さで固まっていた。でも人差し指はシャッターを押していたのだった。
やがて、鷲たちが落ち着き始め、流氷の上から飛ばなくなったきた。お腹が満たされたようだ。時間は8時。2時間はずっと船のデッキから撮影したことになる。体は芯から冷えている。船は港へとむかった。
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